前回に引き続き、レラティブ・ストレングス投資の検証結果について紹介します。
なお、前回及び今回の記事で、特定の投資法を実施することを勧めるものではありません。
投資は全て自己責任でお願いします。
前回までのおさらい
前回、レラティブ・ストレングス投資の手法に「単純移動平均」ではなく「指数平滑移動平均」を導入したらどうなるか、を検証しました。
結果はこちら。
RS1が、単純移動平均でSELL/BUYシグナルを判定した通常のレラティブ・ストレングス。
RS2が、シグナル判定に指数平滑移動平均を使ったものです。
それ以外の計算・判定ルールはすべて同じです。
リスク(値動きが)が小さくなり、リターンが少し上昇しました。
と言っても、劇的に変わったというほどではありません。
検証期間中の値動きが、たまたま運良くRS2に有利だった、と言えなくもない程度です。
今回はさらにシグナル判定の計算に手を入れて、結果がどうなるかを見てみます。
ゴールデンクロス・デッドクロス・パーフェクトオーダー
株価やFXのトレンド分析では、ゴールデンクロスやデッドクロスといった用語でチャートの動きを読み取るというのが行われているようです。
(詳細はWeb検索で調べてみてください。)
レラティブ・ストレングスの「12ヶ月移動平均を上回っているものがBUY、下回っているものはSELL」というのはこれを単純化した指標、と捉えることもできます。
では、これらのチャート分析の手法をレラティブ・ストレングスに取り入れるにはどうすればいいでしょうか?
……いろいろ考えてみたのですが、評点化するのが一番簡単でいいかな、と思いました。
例えば、以下のような感じです:
長期移動平均線(長期線):12ヶ月指数平滑移動平均 中期移動平均線(中期線):6ヶ月指数平滑移動平均 短期移動平均線(短期戦):3ヶ月指数平滑移動平均 A1 : 長期線>中期線のとき1、それ以外のとき-1 A2 : 中期線>短期線のとき1、それ以外のとき-1 A3 : 長期線>短期線のとき1、それ以外のとき-1 A4 : 長期線>直近指数のとき1、それ以外のとき-1 A5 : 長期線と中期線がゴールデンクロスしたら1、デッドクロスしたら-1、それ以外は0 A6 : 中期線と短期線がゴールデンクロスしたら1、デッドクロスしたら-1、それ以外は0 A7 : 長期線と短期線がゴールデンクロスしたら1、デッドクロスしたら-1、それ以外は0 W1~W7 : A1~A7それぞれのウェイト(0.0~1.0) S=W1✕A1 + W2✕A2 + W3✕A3 + W4✕A4 + W5✕A5 + W6✕A6 + W7✕A7
そしてこの時、
S>0.3ならBUYシグナル、S<-0.3ならSELLシグナル、それ以外なら前月の判断を踏襲
としました。
あとは各変数のウェイト(W1~W7)が適切なポイントを探す、数理計画(最適化)問題となります。
ソルバーで最適値を出してみた
実はこの最適化計算がとても面倒なのですが、幸いにしてExcelなどに搭載されているソルバー機能を使えばほぼ自動で計算できます。
その結果出たのが、以下の値です。
W1=0.07
W2=0.10
W3=0.00
W4=0.50
W5=0.60
W6=0.90
W7=0.90
こんなのでうまくいくのか、私自身も半信半疑でしたが、結果は前回お見せしたとおり。
RS3が今回検証した手法でシミュレーションした結果です。
オリジナルの手法と比べて結果が大きく改善しています。
最後に、注意点を
いろいろと試行錯誤しているうちに面白い結果が出たため、こうしてデータを公開しましたが、最初にも書いたようにこの投資法の優位性を主張したいのでもなければ、この方法を他の方に強く推奨するわけでもありません。
賢明な読者であればすでにお気づきと思いますが、特に以下の2点の懸念があります。
・検証に使った期間(2008年5月~2017年5月)でのリターンが最大化するのに特化したウェイトになっているのではないか?
(他の期間や将来に渡っても、このウェイト値が有効であるのか数学的・統計的裏付けが取れない)
・値動きの全体的な傾向は変わっておらず、急激な値下がりを回避できているわけではない。
長期的にはオリジナルと同等の成果に落ち着くのではないか?
これらを克服するためにさらに計算式をいじくり回してもいいのですが、だんだんとシステムトレード・長期投資の領域を外れていってしまいそうなので、このへんでやめておきます。
今回の検証結果はあくまでも参考情報として、レラティブ・ストレングスの特性や計算方法についての理解を深める一助になればよいかと思います。
もちろん、この記事を読んで「この方法を試してみたい!」という人はご自由にどうぞ。
自己責任で投資する限りにおいては、参考になるかもしれません。